『腹部超音波検査にて応急処置ができた例』

                                                                                ヲサメ内科クリニック 下園 大介
【はじめに】 【経過】
 経腹的超音波検査は、体位変換を駆使できる 患者の痛みの訴えが強く、入院施設のベッド
ことが他の画像診断にない有用点である。今回、 が開くまで時間があったため、補助具(Fig
体位変換が有効であり、診断と同時に治療効果 34)を用いて頭低位で伏臥位腹壁走査を駆使
が得られた症例を経験したので報告する。 することにより、嵌頓した結石を外すことを試
みた。
【症例】
76歳 男性 夕食後より右上腹部痛持続する
為、当院受診。
[既往歴]
 胃癌術後(1975年 B-T再建)
 胆石術後(1990年)
[検査データ]
生化学検査 【結果】
ALP 456 IU/l     T-Bil 2.0 mg/dl 左側臥位、立位にしても嵌頓して動かなか
γ-GTP 595 IU/l   ALT 794 IU/l った結石が、頭低位・四つん這い体位をとり、
LDH 2120 IU/l     UA 6.1 mg/dl 患者の背中を叩くことにより、わずかに結石の
AMY 73 IU/l     CRP 0.1 mg/dl 可動が確認できた。しかも、結果的に右上腹部
WBC 4700 /mm3 痛もやわらいできて、後日、入院の受け入れが
尿検査 整ってから内視鏡的に排石できた症例であっ
  GLU  NORMAL   BLD NEG た。
 PRO   +−        KET NEG
  BIL ++        NIT NEG 【結語】
  URO +++       LEU NEG 『絶対に動くはずだ』『絶対に見えるはずだ』
という気持ちを持って検査をしないと観察し
【腹部超音波検査】 たくとも、見えるべきものが見えてこない。体
腹部超音波にて胆道に一致しての圧痛があり、 位変換の魅力は、患者さんやプローブの位置を
膵内胆管に19o程度のstoneを認めた。 変えることにより、地球の重力の方向も変えて
体位を立位・側臥位とかえてアプローチを試み できることである。
たが、可動は認められなかった。(Fig 1、拡大  検査時間は通常の2倍近くかかったが、可動
図Fig 2) が確認でき、今でも初心の気持ちを忘れないと
いう私の心に残る症例であった。
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